お蔵だし、作りかけ模型レポートシリーズ(今命名)(笑)

今回は、ポーラライツからオーロラブランドで再販されている、猿の惑星シリーズです。
半年ぐらい作業が止まってます。

以前に書いたように、このキットは元々アダーという会社の製品のようですが、なぜかオーロラブランドで売られ、現在は、世界的にオーロラの製品として認知されるに至っています。
その出自には、いまだに謎が多くあるのですが、模型本体とは関係ないので、便宜上、以後は、このキットを「オーロラの製品」とみなして説明します。


さて、元ネタの映画のほうは、もう説明するまでもありませんね、SF映画の金字塔「猿の惑星」です。
その衝撃的なラストシーンは、私も子供心に度肝を抜かれまして、シリーズは結局5部作となり、飽きる程見たものです。
あまり知られていませんが、その知名度から、テレビドラマ(あまりデキはよくなかったです)やアニメにもなっています。

近年も、リメイクシリーズが作られており、現在も継続中ですが、ぶっちゃけ私は、あのシリーズはあんまり感心はしません。

個人的には、ティム・バートン監督のリ・イマジネーション版が傑作だと思ってます、やっぱり猿は俳優が演じないとね。

ちょっとだけ映画に触れておくと、このコーネリアスを演じたロディ・マクドウォールは、「フライトナイト」のビンセント役でもお馴染みの俳優ですが、シリーズ最多の4作(とテレビシリーズにも)に出演しています。
後期2作は、コーネリアスは出演しませんので、コーネリアスの子供の猿のリーダー・シーザー役です。

猿の惑星の素晴らしいところは、なんといっても、見ているうちに、猿のキャラクターに感情移入して魅力を感じていくところでしょうが、その魅力は、この人(とジーラ)の演技に負うところが大きいと思います。
特に1作目は秀逸で、コーネリアスとジーラのキャラクターが、人間に同情的ではありながらも、学術視点を崩ないところです。
2人は、これまで長年人間という「原始的な動物」を研究してきたのですから、そう簡単に手放しで人間を受け入れる話になっていたら、あまりにもご都合主義に過ぎます。
そこを一定の距離感を保ち、ある意味「上から目線」がなかなか抜けないながらも、少しずつ心を許して好意を持っていくところが、リアリティがあったのです。
人間に対する態度が極端に差別的で嫌みを感じるほどではなく、かといって完全に同目線でもなく、我々人間の視聴者も猿に共感できる程度には良い人物だという、そのへんのバランスが素晴らしいと思います。
その素晴らしさは、やはりコーネリアスの演技(とクライマックスだけ登場する甥っ子もいい役割です)によるところが大きいと思いますし、その後の続編での様々な役どころも素晴らしいですね。

早い話、コーネリアス(というかマクドウォール)はシリーズ屈指の魅力的なキャラクターだということで、映画で魅力的なキャラクターというのは、当然訴求力が強いわけで、模型としても魅力的だということです。



さて、キットの話に移りますが、以前も触れたとおり、このシリーズ、我々オーロラファンは、ひいき目で見て悪いところに目をつぶってしまいそうになるんですが、正直に言うと、お世辞にもデキがいいとは言いにくいです。

全体を見ると、オーロラテイスト溢れる情景模型なので、雰囲気は素晴らしいのです。
ベースも、シンプルなパーツ構成で、見事にそれらしい雰囲気を出しているあたりもステキです。
パーツの合いも、半世紀近く前のキットとは思えないほど、よく合います。
ぶっちゃけ、以前作った最近のキット「怪獣ゴルゴ」のほうが、遙かに合いませんでしたW

以前述べたように、最近の模型感覚だと、こういう模型は、ほとんど「映画のあの場面」を再現したものになるのが通例ですが、実はオーロラのキットの素晴らしさのひとつは、どれも映画にない「イメージモデル」であることだと思います。
映画を知っている誰もが違和感を感じない、まさにキャラクターのイメージを集約したようによく捉えた情景でありながら、よく考えると、映画にそんなシーンは無いんですよね。
このキットも、コーネリアスは人間の文化を研究していて廃墟を探索している、という設定から出来ているイメージモデルで、映画にこんなシーンは一切ありません。
が、まぎれもなく、映画を知る人なら、このキットを見て「ああ、コーネリアスだなぁ」と思うでしょう。

とまあ、情景そのものは素晴らしいのですが、いかんせん、肝心のフィギュアのデキが、かなりアレなのです。

何がアレなのかというと、ディテールそのものはやはり素晴らしく、顔など、いじるところがないぐらい良いですが、ポージングが極めつけダサいのです。
そして、どう見ても、体のバランスがおかしいのですね。
この猿の惑星シリーズのキット全部が、それなりにおかしく、どれもこれも、頭でかすぎ、ポーズがダサかったりするのですが、中でも特に、このコーネリアスが、体のバランスがズバ抜けて変です。

2016-06-08 21-56-27

はい、写真を見て頂ければ、「妙」なのがすぐ分かると思います。

一言でおかしな点をいえば
頭がでかく、肩幅が広い、それに対して下半身が貧弱すぎる
という点です。
言い換えると
胴体全体に対して、肩幅だけが異様に広すぎる
んですね。

その妙な形になった要因を突き詰めると、どうも「腕を回せるように設計した」せいではないかと思います。
パッケージアートを見ても分かりますが、本来、コーネリアスは、ポンチョのような服が肩にかぶさってるんですよ。
でも、腕を回すには腕と胴体の接合面が平らじゃなきゃいけないわけで、ポンチョの端が肩にかぶさっていると、干渉して腕が回らなくなります。
そのため、キットでは、ポンチョの端よりも、肩の接合面の平らな面を外側に出すようにしてある。
そのぶん、肩幅が広くなってしまっている上に、腕のパーツの方も妙に肩がでっぱってるので、組み上げると、やたら肩幅が広るわけですね、こういうの昔の可動オモチャにはよくあったバランスです。

でもね、コレ、もうちょっと突っ込むと、そもそも、このポンチョみたいな部分、映画の衣装だと、こんなに幅大きくないんですよねw
なんか、無意味にポンチョを大きくして、そのせいで肩幅がおかしくなってるという、本末転倒とでもいうか、変な欠点ですね。

しかも、疑問を感じるのは、これだけフルディスプレイのキットでありながら、あえて腕だけ回せるようにする必要があったのか、という点ですね。
別に脚とか手とか動かないし、肩だけ動いても、ものすごく無意味っぽい気がしますが、このシリーズは全部こういう設計です。

オーロラのキットには、ポージングなどが「イマイチ」なキットも多くありますが、それでも、なんというか「ヘタウマなマンガ」のように、独特の個性、味わいがあると思ってます。
その味わいこそ
わざわざ、半世紀近くも前のメーカーのキットを今、作る意味、楽しみ
だと思っています。

オーロラのキットは、単なる模型というより、芸術と同じように
オーロラの作品
ですから
味わいを壊さないように、あまり大きく手を入れる改造はするべきではない
というのが、私のオーロラのキットに対する基本スタンスなんですが、さすがにこのプロポーションは見ていてキツいので、直すことにしました。

一方で、このシリーズ、顔は
明らかにでかいツラしてます
ええ、比喩的ではなく、普通に物理的な意味でw

が、顔の形自体は異様にデキがいいですね。
そもそもが
猿の顔って似せるの難しいんじゃないか
と思うんですけど、ただでさえ、個性を出しにくい猿顔なのに、演じたロディ・マクドウォールの雰囲気にクリソツです、このあたりはやはり凄いです、ただし
でかいツラですがW
まあ、もちっと突っ込むと髪型もちょっと違いますけどね。

パッケージ絵に至っては
誰だこのゴリラは
みたいな感じですw

肩幅を狭める改造をすると、ただでさえでかい顔が、余計でかく見えるようになってしまいますが、さすがに顔に合わせて胴体全部を大きくするのは無理だし、逆に顔を小さくするのも難しいので
でかいツラ
は我慢することにします。

いや、元々が素顔の上に猿メイクですから、映画見てるときは意識してなかったけど、もしかして映画でも顔でかかったかなぁ? と思ってDVDを見直してみましたが、そんなことなかったです(笑)
このキットの顔のでかさを見てから、資料的に映画の写真を見ると、特殊メイクの猿顔が小さいことに結構驚かされます。
あの当時は素材も発達してなくて特殊メイクは厚めだったはずですし、「ゴムみたいだった」という証言もあります。
おまけに猿の植毛までしてるから、大きく見えて当然と思っていたのですが、意外なほど顔が小さいですね。


さて、そんなこんなでキットの改造ですが、以前、ファイル破損で画像が失われた事件があり、いっしょにこのキットの改造写真も失われてしまいました(T.T)
そんな事情で、いきなりサフ吹きした状態まで進んでしまいます。

CIMG0010

頭は肩にジェンガよろしくのっけてるだけの状態ですので、ちょっと浮いてます。

改造ポイントですが、肩の接合部を切り落として幅つめ。
ポンチョの端が肩より出るようになるまで幅つめしてます。
同時に、腕パーツの肩側もできるだけ削り、肩幅が異様に広いのを修正。
腕の角度もダサいので、肘から切り落とし、曲げ方を変えて再度接着。
手は腕と一体整形ですが、向きを変えたいので切り落としてあります。

脚は短すぎるので、途中で切断し、プラ板を挟んで延長し、2ミリ伸ばしてあります。
各部のモールドは甘いので、凹部などを彫り込んであります。

あと、写真では見えませんが、股間のところというか、胴体に脚が繋がっている部分、胴体側がキットのままでは抜きの都合で平らなんですが、本来はスカートのような形状ですから脚にかぶさってないとおかしいので、ある程度、彫り込んでやってます。

顔はあまりいじってませんが、毛のモールドを一部彫り直しているのと、毛先がツライチで毛っぽくないので、ぎざぎざに彫り込んであります。

かなり大幅な改造になっちゃいましたが、いかがでしょう?
素組み写真と比べると、ずっと良くなってると思います。

ってわけで、今回はここまでにしておきます。